ホーム > メディア > 導入事例 > 【神奈川県横須賀市様】「AI相談パートナー」の生成AI活用で、相談記録票の作成時間を短縮し、市民からの相談業務の効率化を実現

導入事例

【神奈川県横須賀市様】「AI相談パートナー」の生成AI活用で、相談記録票の作成時間を短縮し、市民からの相談業務の効率化を実現

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【神奈川県横須賀市様】「AI相談パートナー」の生成AI活用で、相談記録票の作成時間を短縮し、市民からの相談業務の効率化を実現

お話をうかがったお客様

oozeki_010.png
(左から)
横須賀市 経営企画部 次長 兼 デジダル・ガバメント推進室長 寒川 孝之様、デジタル・ガバメント推進室 推進担当主査 板井 健一郎様

幕末にペリーが来航したことで知られる横須賀市。 三笠公園やヴェルニー記念館のような歴史的な名所が立ち並び、アメリカ海軍の基地を擁することから、アメリカンな空気を味わえる観光地としても人気を集めています。

三浦半島の北半分を占める横須賀市は東京湾と相模湾の両方に面しており、年間を通じてさまざまな海の幸が水揚げされます。また、三浦半島の豊かな土壌では三浦ダイコンを始めとする種類豊富な農産物を生産。こうしたグルメを目当てに訪れる観光客も少なくありません。

一方、市政に目を向けると、世界的にコロナ禍となった令和2(2020)年4月より「デジタル・ガバメント推進室」を設置し、業務のデジタル化に取り組んでいます。

2023年からは、生成AIの業務利用も開始。生成AI活用を「第二の開国」と位置づけ、活用を推進しているといいます。

同市では、福祉相談の窓口業務に、アイネスと三菱総合研究所が共同事業として企画した「AI相談パートナー」を導入・活用しています。
今回は、デジタルガバナンス推進室のお二人に、活用方法や今後の展望などについて伺いました。

   

【横須賀市基本DATA(令和5年12月現在)】

横須賀市基本DATA(令和5年12月現在)
  • 人口:37万4,800人
  • 世帯数:16万6,087世帯

【課題】
相談業務の均一化によるサービス向上と残業抑制

横須賀市 経営企画部 次長 兼 デジダル・ガバメント推進室長 寒川 孝之様

横須賀市 経営企画部 次長 兼 デジダル・ガバメント推進室長 寒川 孝之様

寒川様 : 横須賀市では、市民がどこへ相談すれば良いか判断のつかない福祉相談を受ける総合窓口「ほっとかん」を、令和2(2020)年4月よりオープンしました。たとえば、「お金がなくて生活に困っている」といった相談を受け付け、担当課へ迅速につなげるのが目的です。

この相談業務に対応する職員には、ベテランから若手、異動まもない人など経験値の異なった職員がいるため、どうしても対応に多少の差が出てしまいます。相談に訪れたタイミングで、ベテランが担当すれば良いサービスが受けられ、そうでなければサービスに差が出てしまう可能性があっては、市民サービスの公平性が保てません。こうした状態を改善すべく、均一化を図る必要がありました。

また、職員の残業も課題となっていました。窓口の受付時間内は、市民からの相談対応に専念するため、相談内容を個別に「相談記録票」として作成するのが、17時以降の残業時間になってしまうのです。
このような課題を抱えているところへ、すでにいくつかのシステムでお世話になっていたアイネスさんから、「AI相談パートナー」を開発中であるという話を聞きました。
横須賀市では、世界的にコロナ禍となった2020年4月に「デジタル・ガバメント推進室」を設置し、業務のデジタル化を進めてきました。その一環として、2023年4月には職員が業務に最も利用しているプラットフォーム上にChatGPTを実装し、文書案、Excel関数の作成に活用してきた経緯があります。公的機関でもAI活用は必須の流れだと考えていました。

板井様 : 特に興味を持ったのが「ガイダンス機能」です。これは、厚生労働省の指針などを学習させることで、相談内容の中から指針で注意を促されているキーワードを拾ってアラートを発出してくれるというものです。たとえば、「あざ(痣)」という言葉が含まれていれば「虐待の可能性」など深堀りすべき内容を示してくれます。特に、経験の浅い職員では、こうした注視すべき言葉を洩らしてしまう可能性があるため、職員の経験値に左右されない相談受付業務均一化の実現により、市民サービスの向上が期待できると考えました。
そこで、アイネスさんから、「AI相談パートナー」を活用した実証実験の提案を受け、ぜひ取り組みたいと考え、横須賀市とアイネス、株式会社三菱総合研究所の3社で包括連携協定締結しました。

【ニュースリリース】
AIによる住民相談支援の実証を横須賀市で開始~「AI相談パートナー」を利用し自治体DXを推進~

ほっとかん横須賀市のWebサイトより引用

【実証実験の概要】
およそ千件の相談で有効性を実証

板井様:実証実験は、令和2(2020)年12月16日から令和4(2022)年3月31日の期間、LGWAN(総合行政ネットワーク)環境下で行いました。

「ほっとかん」窓口における対面および電話による市民相談の際に、相談の記録に許諾が取れた場合のみ「AI相談パートナー」による会話の記録を行いました。
相談者と職員の会話はリアルタイムに記録され、モニター画面上にも表示されます。
記録票を作成する際は、会話の記録データ上の必要箇所をクリックすると、記録票の該当項目へ入力されるという仕組みです。

寒川様:当初は、会話中の「あー」「ええと」といったつなぎ言葉もすべてデータ化されてしまっていたのですが、これらを省いたデータが残るように改良してもらいました。

実証実験期間中におよそ千件程度の相談データを蓄積し、「AI相談パートナー」が職員の業務負担の軽減と相談業務の質の向上に、活用していけそうだという確信が得られたため、令和4(2022)年4月より本格導入に踏み切りました。

yokosuka_img05.png

【成果】
市民と向き合える時間が増え、引き継ぎもスムーズに

寒川様:現場の職員たちは、「AI相談パートナー」の導入前後で業務効率がまったく違うことに驚いています。導入によって、市民と向き合うフロント業務により注力ができるようになり、的確な支援を提供できるようになったとも聞いています。

また、「ほっとかん」で受けた相談内容を踏まえて各対応部署へ引き継ぐ際、重要な資料である会話データをスムーズに共有できるようになりました。こうした情報共有のしやすさも、「AI相談パートナー」を導入した効果ですね。

デジタル・ガバメント推進室 推進担当主査 板井 健一郎様

デジタル・ガバメント推進室 推進担当主査 板井 健一郎様

板井様:「AI相談パートナー」導入前は、職員が相談中に取ったメモを元に受付時間外に相談記録票を作成していたわけですが、聞き漏らしがあったりメモが誤っていたりする可能性もゼロではありません。また、職員と市民の間で「言った言わない」の論争が起きてしまうことがあり、職員のメンタルに負荷がかかる側面もありました。

「AI相談パートナー」があれば、漏れなく会話の記録が残りますし、対応している職員の上司もリアルタイムに会話データを確認できるため、いざという時に会話の内容を踏まえた上で、対応することが可能となります。こうした副次的な効果もメリットに感じています。

導入前は、相談業務にAIを活用することに対して「市民から賛同を得られるだろうか?」という不安もありましたが、蓋を開けてみると記録が残ることに歓迎ムードだったのは、意外でした。

【展望】
生成AIと組み合わせ、文語体への変換や要約を試みる

デジタル化後のイメージ

寒川様:先ほど、実証実験中に、つなぎ言葉を削除した会話データを作成するかたちに改善いただいたと話しましたが、それでも、会話データは口語体のため、文語体に編集し直すのには、かなりの手間がかかります。また、30分程度の相談でも文字に起こすと6,000文字前後にもなるため、ここから記録票を作成するには、やはり、それなりの時間がかかっていました。

そこで、実証実験の第二段階として、令和5(2023)年9月より「AI相談パートナー」と生成AIを組み合わせ、口語体から文語体への変換と、1,000文字程度までの要約の検証を開始しました。この実証実験は、令和6(2024)年3月末まで実施の予定です。

【ニュースリリース】「AI相談パートナー」における生成AI活用に係る実証を横須賀市で開始

相談内容には市民の個人情報も含まれるため、LGWANから閉域網を通して生成AI環境(Azure OpenAI Service)を使用しています。さらに、個人を特定できる情報はマスキングを施し、職員の目検でのチェックを経て、個人情報ではないデータに変換した上で生成AIへ入力しています。

実証実験を開始して、3ヵ月が経過しましたが、文章の要約は1~2分で完了するため、職員の相談記録票作成時間は大幅に短縮できるようになりました。その分、より手厚い支援に向けた時間を取れるようになったそうです。

板井様:デジタル・ガバメント推進室として、相談業務に限らず、広く業務のデジタル化を進めているところです。情報共有という点では、これまで、各担当者が自分のデスクで書類を保管するなど、保有している情報を組織内で共有できていないケースもありました。

「AI相談パートナー」を活用することで、情報共有もしやすくなるので、市民からの相談を受ける部署を中心に、利用を広げていきたいですね。今後も、市民サービスの向上に活用していきたいと考えています。

寒川様:すでにChatGPTに国の文書などを要約させており、生成AIで高品質な要約が可能なことはあらかじめわかっていたので、使わない手はないと考えていました。
ペリーが来航したことで開国に沸いた横須賀市ですが、自治体として全国で初めて業務に生成AIを利用したこともあり、生成AIを「第二の開国」と位置づけ、今後も積極的に活用を進めていくつもりです。

【お問い合せ先】
今回、ご紹介しましたアイネスの「AI相談パートナー」についての紹介は、以下のURLよりご覧いただけます。

より詳しい内容をお知りになりたい方は、以下よりお問い合わせください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
当ウェブサイトでは、利便性やサービス向上を目的に、Cookieを使用しております。
「Cookieについて」をご参照いただき、Cookieの使用にご同意いただける場合は「同意する」ボタンを押してください。
ご同意いただけない場合は、ブラウザのCookieの設定を無効化してください。

This website uses cookies in order to improve user experience quality. Please review our cookie notice.
If you agree with them, press "Agree" button. If you do not agree, disable cookies in your browser settings (opt out of their use).