【千葉県千葉市様】「AI相談パートナー」で相談窓口を効率化、市民に寄り添う支援を実現


左から:千葉市 保健福祉局健康福祉部地域福祉課(福祉まるごとサポートセンター)主任主事 松原 佑恭様、千葉市 保健福祉局健康福祉部地域福祉課(福祉まるごとサポートセンター)課長 中田 裕之様
千葉市は明治6(1873)年に木更津、印旛の2県が廃合されて千葉県となり、県庁が当時の千葉町に置かれたことで、県庁所在地となりました。
大正10(1921)年1月に市政を施行、その後、近隣町村との合併や埋め立てで市域を拡大し、平成4(1992)年4月、全国12番目の政令指定都市に移行しました。
令和7(2025)年9月時点の人口は98万7000人で、さまざまな都市機能を集積し、首都機能の一翼を担う大都市として発展を続けています。
千葉市は令和6年10月、市の「福祉まるごとサポートセンター」にAI相談パートナーを導入し、相談業務を効率化、市民に寄り添う支援を実現しました。そこで、今回はAI相談パートナー導入の経緯と、導入後の効果について同センターで相談業務を担当する保健福祉局健康福祉部地域福祉課の松原佑恭主任主事にお話をうかがいました。

- 人口:98万7,234人
- 世帯数:482,849世帯
【課題】
組織内での情報共有に遅れ
千葉市が令和5年10月に開設した福祉まるごとサポートセンターは、市民からのあらゆる「困りごと」の相談を受け付ける窓口で、特に「どこに相談したらいいのか分からない相談」に対応する難しい役割を負っています。
そのため、個々の相談内容を詳しく記録、それを職員の間で共有した上で、解決策を探る必要がありますが、相談件数そのものが多く、記録の作成が遅れがちで、情報共有が難しいという問題に直面していました。
Q.福祉まるごとサポートセンターが開設されてから、どのような課題が浮かび上がったのでしょうか。
松原様:当センターは市の地域福祉課と千葉市社会福祉協議会が官民共同で運営するハイブリッドタイプの相談窓口で、12人の職員で対応しています。相談対応件数は今年度の上半期で6,500件を超えていますが、相談内容をしっかり把握する必要もあって、お話を聞く時間が1時間を超えるようなケースも少なくありません。
そうした相談の多くは内容が複雑で、適切な支援につなげるためには、まずどんな相談を受けたのかを職員の間で共有する必要があります。相談の内容は、対応した職員がその場でメモし、それを要約して相談記録システムに入力するという仕組みでやってきました。ところが、相談の4分の3は電話ですので、職員は1件の相談対応が終ったら別の電話にすぐ出なければなりません。その結果、相談記録の入力がどうしても後回しになって、情報の共有が遅れることが少なくありませんでした。
Q.メモを取る作業も大変ですね。
松原様:相談に対応する職員は、お話をうかがいながらメモを取りますが、場合によっては、類似の過去の相談記録を参照したり、インターネットを使って事実確認をしたりするなど、複数の作業を同時にこなさなくてはなりません。また、相談にいらした方、電話をかけてきた方は実際にお困りのことがありますので、お話を聞きもらしてはいけませんので、その心理的な負担もかなりのものでした。
【導入】
交付金を活用し、県市で共同調達
Q.AI相談パートナーはどのような経緯で導入されたのでしょうか。
松原様:千葉市が単独で導入したのではなく、国の「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)」を活用した音声マイニングシステムの共同調達を行う事業に参加しないかと、千葉県からお声がけいただいたのがきっかけです。千葉市は令和4年3月に策定した千葉市行政デジタル化推進方針に基づいて、「デジタル技術の積極的な活用により、質の高い行政サービスを持続的に提供し、多様な行政ニーズに応える市民に寄り添ったデジタル化」を進めていますので、その一環にも位置付けて、AI相談パートナーを採用いたしました。
【成果】
「AI相談パートナー」で相談窓口を効率化
Q.AI相談パートナーの導入はスムーズに進みましたか。
松原様:システムの操作については、アイネスさんに端末の設定から職員への説明をお願いしました。操作には難しいテクニックが必要というわけではありませんので、使い方が分からないという職員はいませんでした。ただ、導入当初は積極的に使う職員は少数でした。
Q.それはなぜでしょうか。
松原様:おそらくは心理的な抵抗があったのだと思います。AI相談パートナーを使うことで、業務の効率化が進むと言われても、機械なので漏れが起きるかもしれない、だったら自分でメモした方が確実だと思った人が多かったのだと思います。
Q.その状況は変わったのでしょうか。
松原様:あるきっかけがあって、劇的に変わりました。
Q.どのようなきっかけでしょうか。
松原様:さきほど申し上げたように、当センターは市と社協(千葉市社会福祉協議会)の共同運営で、両方の職員が同じように相談に対応しています。社協の方に相談対応歴の長いベテランの職員がいました。その職員はIT関連の知識があるとか、そういうタイプではなかったのですが、導入当初から(AI相談パートナーの)システムを積極的に使っていました。毎月相談件数が伸びていて、各職員が対応に追われ、記録すべき内容がたまって忙しくなっていったのですが、その方にはそうした様子がありません。他の職員の机には相談内容を書いたメモがどんどん増えていくのに、その人はシステムを使って記録をしっかり整理していました。そこに他の職員も気が付いて、実際に目に見えた効果があるのだから、みんな積極的に使ってみようと話し合いました。
実は、私自身も当初はシステムの利用について消極派だったのですが、半ば強制的に心理的なハードルを下げて使い始めてみました。使えば習熟度が自然と上がりますので、いろいろと工夫もできるようになります。例えば、AIが自動で要約した結果を後で見直して、加筆修正をすることで記録としての正確さが向上します。
それから、相談のお話を聞いている中で、相手が言ったことをオウム返しのように反復することで、相談内容を掘り下げていく手法があるのですが、それがAIの要約の精度を上げる上でも、非常に効果的であることも分かってきました。
Q.導入の効果は、どのような部分で実感されていますか。
松原様:やはり相談記録の作成時間が削減された部分が大きいと思います。1件当たりの相談対応業務には相談そのものにかかる時間と記録を作成する時間が必要ですが、それらが3割程度は短くなった感覚です。会話を録音してテキスト化するだけでなく、AIが要約してくれるという部分には間違いなく効果があります。
経験が浅い職員ですと、相談を受けながらメモを取ることに必死で、特に対面相談の場合、相手の顔を見る余裕がなくなってしまうようなこともあるのですが、そもそもシステムを使えばメモを取らなくてよくなりますから、その効果は大きいですね。
一方、経験が長い職員は、事後に相談記録を作成する時間が減った分、空いた時間で相談された内容に対する支援の充実を図ることができるようになりました。当センター全体で考えても、相談対応件数が増える中で、支援の質を落とすことなく、職員の体制も同じで継続できています。(AI相談パートナーの)システムを導入したことにより、「支援の充実」という部分で市民に還元できていることは大きいと思います。
そのほか、相談記録に含まれる個人情報を自動でマスキングする機能やLGWAN環境の中で使え、記録内容を生成AIには学習させないという部分も、行政機関が利用する上での必須条件をクリアしていると思います。
Q.今後、AI相談パートナーをどのように活用するお考えでしょうか。
松原様:当センターを開設してから、相談対応件数は右肩上がりで増えてきました。現在は高止まりの状態にありますが、職員数を増やすことは難しいので、限られた職員の負担を減らすため大きな効果があると感じています。その結果、相談をされた方に対する支援の質を上げることもできると思います。国の交付金を受けて導入したものですので、効果をKPI評価に令和8年度中にまとめることになっています。KPI評価によってシステムの有効性を証明できれば、当センター以外の部署に横展開していくこともできるのではないかと考えています。
【お問い合せ先】
今回、ご紹介しましたアイネスの「AI相談パートナー」について、より詳しい内容をお知りになりたい方は、下記からお問い合わせください。
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